2011年2月14日月曜日

【300文字小説】

集中力

 
「あっちゃーん! おもちゃ片付けて早く下に降りてきなさーい」

「はーい」

 ぼくは部屋中に散らばったおもちゃを見つめて集中した。

「さあ、ごはんよ」

「いっただきまーす」

「あっちゃん。うち以外で、それやっちゃだめよ。

 ちゃんと『お醤油をとってください』って言ってちょうだい。

 他の人はそんなことしないの。手を使ってとるのよ。わかった?」

「わかってるよ、ママ。でも、かずくんも、ゆきちゃんもできるんだって」

「本当か? それは。パパの子供の頃は、そんなこと誰もできなかったぞ。

 見ただけで遠くにある物を引き寄せるなんて」

「あら、そう言えば今日の夜、月蝕ですって」

「あ、思い出した。理科の宿題で、月蝕の観察をしてきなさいって」
 
 


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