2011年5月1日日曜日

【300文字小説】

天才発明家

 
「困ったな。パスワード忘れちゃった」
「音声認識で開く金庫なんか発明するからよ。あんた最近、物忘れがひどいのに」
「いや、鍵をしまった場所をよく忘れてしまうから、鍵のいらない金庫を発明したんだ」
「何か思い出すためのヒントはないの?」
「そのヒントも忘れてしまった」
「子供のころ飼っていた犬の名前は?」
「犬は飼ったことない」
「好きな果物の名前は?」
「果物は嫌いだ」
「何かにパスワードを書きとめてなかったの?」
「そのノートをしまった場所を忘れた」
「最悪! 次は物忘れ防止の機械でも発明すれば?」
「うるさいっ!」
カチッ、と音がして金庫が開いた。
「あったよ。そのノートが。どなたか存じませんがありがとうございました」
 
 

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