2013年5月19日日曜日

【300文字小説】

最後の状態

 
スクランブル交差点の信号が青に変わると、人々は一斉に横断し始めた。

信号が赤になっても、まだ渡りきらない人が慌てることなく歩いている。

あれ? 何も変ってないぞ。ここは千年後の渋谷ハチ公前のはずなのに!

タイムマシンの設定を間違ったのか……。

とりあえず、交番に行って聞いてみよう。

「あのー、すいません。ちょっとお尋ねしますが……」

「あっ、本部と連絡をとるので、ちょっとそこで待ってて」

「はい」

「本部応答願います。古代人一名保護!」

古代人! すると、ここは未来。やったー!

「いやぁー、千年後っていっても全然昔のままですねぇー!」

「当たり前だよ。ここはかつてあった国を最後の状態で完璧に再現した歴史保護区だからな」