2020年6月19日金曜日

【300文字小説】

忘却


会社から駅までの途中にある本屋。今日は大好きな作家の新刊発売日。どれだけ待ち望んだことか。あったあった。

あれ? 並んで置かれているのは同じ作家でまだ読んでいない短編集のようだ。帯には「注意! 何もかも忘れてしまうほどの面白さ!」とある。これもあわせて買っておこう。

運良く席に座れた。さきに短編集のほうを開いてみる。新作は長編なので家についてから一気に読むのだ。

聞きなれない駅名。降りるはずの駅をとっくに過ぎてしまった。宣伝文句の通りじゃないか!

何駅か逆戻りして、ようやく家にたどりついた。

さて、お目当ての長編を読む前に、さっき読んだ短編集のほうは本棚にしまっておこう。

あれ、なんで同じ本がすでにあるんだ?
 
 

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